◆400文字
田舎のおばあの家は、少し寒い。
大きな木造の家は、隙間風がどこからともなく入ってくる。
朝早く目が覚めてしまったので、雑草が生い茂る庭に出てみた。
朝露がすごい。草木に滴る水滴に光が反射して、なんとも綺麗だった。
見惚れていると、おばあも庭に出てきた。
「朝の涙じゃね」
「涙?」
「ワシのおかあが言うとったんよ。冷えた朝はどうしようもなく、泣きたくなる時があるんやって。そんな時は、朝が自分の代わりに泣いてくれるらしいわ」
おばあは、気難しそうな表情をしながら話した。
「そっか。なら、この朝も私の代わりに泣いてくれているのかもね」
私がそう伝えると、おばあはにっこりと微笑んだ。
そして、霞のように消えていった。
「そんなに早く逝くなよ、おばあ」
朝が代わりに泣いてくれても、私の瞳から、また涙が溢れる。
でも、なんだかおばあらしいな、とも思えた。
庭から仏間を覗く。
線香の煙が、ふっと揺れた。
この作品は「ショートショートnote」を使用して執筆しています。
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