少しずつ少しずつ読んでいた『カプセルストーリー(人喰い沼の水、全部抜く・夜の迷子ほか) (3分間のまどろみ)』を読み終わったので、メモがてら感想を。
カプセルストーリー・青
坊ちゃん文学賞、ショートショート大賞受賞の新鋭作家たちによるアンソロジー短編集。不思議で情緒的なストーリー22話を収録。蚊に惑わされて、夜の街に連れ出されてしまう「夜の迷子」他、カプセルトイのようにどれを読んでも面白いストーリーが満載。
Amazonより引用
全体的なこと
それぞれの作品に作者の色がしっかり出てる。
ちょっとした隙間時間に楽しめるし、そういう読み方が適しているはず。
表現や文章の固さというか「作品に纏わりつく空気」みたいなのがそれぞれ違う。
一気読みすると受け取り方の切り替えというか、そういう部分が多少生まれるので個人的にはもったいなく感じる。
じっくり味わうなら夜寝る前、通勤中、ちょっとした休憩時間などに1本ずつ読んでいくのがおすすめ。
詳しい概要は作家として参加している霜月透子さんのnoteを読んでくださいませ。
今日蜂賀が書くのは青の方の感想。
どの作品も素晴らしいのですが22作もあるので、個人的に「めちゃ好き~!!」なったものだけ簡単にコメントを。
さすがにSSでネタバレせずに紹介できるほどのコメント力はないので、これから読む人は読まないでください。
『人喰い沼の水、全部抜く』 作:椿あやかさん
この作品集の中で一番エンタメ~!
さすが一番手ともあって、全年齢に向けて面白い作品だと思う。
テレビの人気のコーナーと土着系の怪談が合わさっているようなアイディア。
大立ち回りもあって楽しい。探偵ナイトスクープみたいな感じでシリーズ化できそう。
『心霊写真』 作:高山幸大さん
設定がめちゃくちゃいい!笑
現代的な流行と心霊現象がコミカルに合わさる。
そして世界中を巻き込んでいくスケールのでかさ。
幽霊が生き生きしていく展開は笑わせてもらった。
『怪談箪笥』 作:石原三日月さん
次は何が出てくるだろうと読者の期待を煽る構成。
ショートショートでもそういう読者へのサービス精神ってめちゃくちゃ大事だと思うんだけど、この話は特にその力が際立つ。結び方も後味が残る形で好き。
ショートショートは怪談と相性がいいのか? もしくは蜂賀が個人的に好きなだけ?(笑)
『書物守』 作:霜月透子さん
異国の地の冒険譚や伝記を読んでいるようなショートショート。
あんまりこんな作品って今まで読んできたことないような?
ショートショートってすぐに読者を物語に没入させる(前のめりにさせる)難しさがあると思うんだけど、現代舞台でないものでさっと物語の世界に入らせてくれるのがこの作者さんのすごいところ。(情景描写と、読者の想像力を呼び起こす力が強いんだと思う)
最後は読者が旅の者になり、繰り返されていく。この終わり方も読者が物語の世界に入らせてもらわないと、味気なくなるはず。作者の狙いは確実に成功している。
『描き氷』 作:杉野圭志さん
エモいという言葉で感想を書きたくないけれどエモいので仕方ない!
少年の頃の思い出、おばあちゃん、記憶のなかのなかにある、大切な思い出。
成長するなかで忘れていく場面は誰にでもあって、もしかしたらこんな不思議な体験も本当にあるのかもしれない。
『アワイガイ』 作:長野良映さん
この作品を一番最後に持ってきたのは上手な構成だと思った。
夢のなかの不思議な出来事が現実にも介入していく。
それはさっと解決しちゃうんだけど、夢の続きがまだあるような結び方。
色々な作品が集まったこの本もその一部のような気がしてくる。
余談
こういうシリーズは続けた方が坊っちゃん文学賞はもちろんショートショート界隈全体が盛り上がるので続けてほしいと思う!
せっかく2冊出たのだから、本のサブタイトルは「青」「緑」みたいにわかりやすい表記にしてほしいかな?とは思った。(電子書籍のストアだとどっちも「カプセルストーリー」という表示になっちゃうし、それって紹介しにくい)
ちなみに、なんかこう感想書くといつも絡んでいる作家さまが多い…?という感じがしないでもないのですが、これは別にひいき目でなにか書いてるってわけじゃありません。特に好きなのをピックアップしただけなので。
なんでだろ?と考えてみたのですが、普段交流している作家さんたちって、作品を蜂賀が一方的に読んで好きになって絡みに行って今に至るんだからある意味当然でした。
緑も少しずつ読んでいこうと思います。
それでは!
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