呪いの犯人

呪いの犯人

◆実話怪談
◆1,000文字

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「呪いの犯人」

 あなたは、呪われた経験がありますか?

 私はある事情で、高校を卒業すると同時に県外に引越しをしました。

 それからひと月が経った頃でしょうか、眠ると毎晩金縛りにあうようになったのです。

 正直に話すと、金縛りにあうのはこれが初めてではありません。

 内心「ああ、またか……」という気持ちがありました。

 たいていは二、三日も無視をし続ければ消えていきます。この時もそう思っていました。

 ところが一週間、二週間と金縛りは続き、次第にまともに眠れなくなってきたんです。それに、一晩で何度もその金縛りは起きて……。眠っては起こされ、意識を失っては起こされ。

 まともな睡眠がとれず、体調を崩し、仕事にも支障をきたしていました。

 今までの金縛りとは違う。そう確信を持ち始めていました。

 その日もいつものように金縛りが始まると、何かの気配を色濃く感じました。アパートのドアの方からドアノブを触る音がしたり、窓の方からこちらを覗くような気配がするんです。

 まるで建物の周りをぐるぐると回っているような、そんな感じでした。いい加減に私も怒りが湧いてきて、無理やりに体を動かそうともしました。それでも、やっぱり少しも体は動かない。

 それがいけなかったんでしょうね。

 私が起きたことに気付いたのか、何かの気配は部屋の中に入ってきました。その気配が私の体の上にまで来ると、ドブのようなにおいが部屋に充満してきて……。

 何かがしきりに喋りかけてきました。体は動かないのに、なぜか少しずつ目が開いてしまう。閉じたくても、勝手に。

 そこには、私を見下ろす真っ黒な人間がいました。なぜか歯だけが異常に白く、口を開けて笑っていました。

 朝日が昇る頃、ようやくそれは出ていきました。体が動くことがわかると、私はトイレに駆け込み嘔吐しました。ドブのようなにおいを残して去ったあの霊を、どうにかしなければならない。

 私は友人の伝手で、ある霊能者に相談することにしました。

 霊能者は私に会うと、私を薄目で見て溜め息を吐きました。

「――呪われてるよ」

 私はてっきり事故物件にでも住んでしまったと思っていたので、驚いて聞き返しました。

「呪いってそんな……恨まれることなんて今までした覚えがないんですけど」

「あのね、こんなこと言うの酷かもしれないんだけど」

 霊能者は一呼吸置いてから話す。

「君を呪っているのは、君のお母さん」

 全身に鳥肌が立ちました。なぜなら私は、幼い頃から家庭内で虐待を受けていたんです。そのこともあり、高校卒業と同時に家を出ました。もちろん、そんな話は霊能者にはしていないし、友人も知りません。

 霊能者は私の後ろを見ながら言いました。

「霊にも色々あるけどさ、僕からしたら一番怖いのは生霊だよ」と。

 今後の対策を聞きながら、私がいない家で私を呪い続ける母を想像していました。

 そう思えば、あの笑い方は、私をなじる時の母の笑い方にそっくりでした。

 今でも、実の母親に呪われるという現実を、受け入れられずにいます。

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